だが、第二軍が起こした、と称されているが当の本人達は、うめきながら倒れていた方で、補導と同時に病院へ送られ、現在入院中なのでその表現は適当ではない。実のところ第二軍の相手が不明なので「第二軍が…」というタイトルがついたまでである。
あの「夜仇武」がノサれた。しかも相手は正体不明。このショッキングな事件はさまざまな憶測と噂を従え、またたくまに広がり、今現在、柏木のようにその事を知らない学生のほうがめずらしいのである。
と、一気に事のあらましを説明すると赤木は一息ついた。柏木は「うーん」と考え込んでいる。日頃接する機会のないジャンルの話なので、整理に戸惑っているのか。
噂が広まるとともに、大衆の注目は第二軍を倒した相手に注がれていった。「ついに起こった内部紛争!!」などと号外をだす新聞部や、近隣の不良グループを書き連ねた下馬評を検討しているギャンブル研究会などの他に、本職が動き出したなどという物騒な噂まで、それこそさまざまなバリエーションの噂が吹聴された。
「あいつらみんな打撲とか骨折してんっすよ。棒っきれかなんかでどつかれたみたいな」
柏木が上体を引いてしまうくらいに葛城が顔を近づけて小声で言う。
「それにね、相手は一人だったって話もあるんすよ」
「それが信じられへんっちゅうねん。いったい、誰から聞いてん!?」
赤木がそれまでの態度を翻して反論する。
「知り合いのナースからや!」
思わぬ仲間の反撃につい本当の事をしゃべってしまった葛城は、少し顔を赤くしてうつむく。
「おまえ、まだ切れてへんかったんか!?」
呆れ顔で赤木がつっこんだ。さらにあの女はやめとけなどと一人前に説教をした後、柏木に視線を戻して、
「とはいえ、それやったら、信憑性あるよな…」
「せやろ、そうやねん」
と少し落ち込んでいた葛城も眼を輝かせて柏木を見る。しばしの沈黙。
「ふーっ」
柏木が深いため息で沈黙を破る。
「なにを言い出すのかと思えば…」
「ホント。頭ん中ニコチンが詰まってんちゃう?」
突然割り込んで来た声に三人が振り向き、葛城と赤木の表情が思わぬ天敵の出現に緊張し、柏木の表情が和む。
「梓ぁ!」
梓とよばれた声の主は、よっと左手をあげて挨拶を交わすと右肩に背負った防具袋を背負い直した。
「出たな素振り女」
「黙れ、ハチマキ男」
赤木の口撃をあっさり跳ね返し、言葉を続ける。
「ごめんね千鶴。…にしても、朝から不幸な出会いやねぇ」
柏木が、持ったげる。と右手を差し出し、梓が「ナカガワ」と書いたビニール袋をわたす。
「不幸ってなんや!!」
赤木が再度つっかかる。
「言葉のまんま。…さ、いこ。千鶴」
おっとり型の柏木に助け船を出すべく、いつものように促したが、柏木は留まっている。
「金曜の晩は、梓と遅くまで勉強の話してたの…ねぇ、梓」
そうだった。話の詳細は解らないが、先週金曜日の夜のアリバイを問われていたのだった。